かわいいだけじゃいきていけない!

箒でさっと掃かれて消えてなくならないように

少しだけ、おとなになった君に

さん。ぜろからスタートしてみっつめ。
2015年2月。気づけば、優太くんがユウタを演じるようになって3年めの冬が訪れていました。

3年め、というのは、いろんな意味で注視されることが多いように思います。
長くはない、でも、短くもない。成熟に向けて今一歩、足を踏み出したところ、みたいな。過渡期って言葉がしっくりくるのかなぁ……未熟というには洗練されているけど、熟練というにはあまりにも拙い、そんな感じ。
今年のユウタはそんなあやうい位置に立っていた、のかもしれない、と、今になって思います。

2015年のSHOCKはメインキャストの大きな変更があって、新しく携わる人間が3人もいて。キャリア自体は一番短いけれど、SHOCKだけに特化してみれば、一番下っ端ではない、そんな立場での3年め。さて、優太くんはどんなユウタを演じるのだろうか……と、こんなこと書いといてなんだけど、正直、あまり期待はしていなかったです。というか、過去2年のユウタでも構わなかったので、もちろん精度は増してて欲しかったけど、劇的な変化というよりはそういう細かなレベルアップを観劇する度に見つけられればなぁ…と、それくらいに思っていたんです。
ところが幕が開けて2日目のその日、2015年のSHOCKを観劇したら、それはもう驚いたなんてものじゃなかったのです。

SHOCKの見せ場のひとつ、ジャパネスクの殺陣。

過去2年、私は優太くんの殺陣をあまり好きになれなかったんですよ。なんでって?だって、『居る』けど『闘う』ことはしていないように感じられて。刀を振りかざして、挑発しているのは生身の人間でなく空虚……たしかに他の演者の皆さんに混じって動き回ってはいるけど「どうしてそこにいるの?」って訊きたくなるくらい、ほとんど刀を交えていなかったから。だのに、一丁前の表情をして、「なんだかなぁ…」と思ってしまう心を、敢えてそういう演出なのだとしても、最後までなくすことができなかったんです。
とはいえ、私はどちらかというと担当にはデレなタイプ。階段で銃を撃った後、光一くんだけを相手にする後半部分は、個人的に「おぉ…」と感心できる見所(詳細については割愛)があって好きでした。
それが、今年のSHOCKでは、ぜんぜん、見違えるようだったから驚きました。
一番の変化は、誰かと刀を交える回数が各段に増えたこと。『居る』だけじゃない、『闘う』優太くんが観れたのが本当に嬉しかった。
冒頭でコウイチとヤラがそれぞれ敵に首に刃が振り下ろされる緊迫したシーン、ヤラ→コシオカの対となったのがコウイチ→ユウタで、もう、それに鳥肌が立った。コウイチとヤラが睨み合うように、コシオカに鋭い眼孔を向けるユウタ…あの、息を飲む瞬間の一端を担ったことが嬉しくないわけないです。こうして文章をしたためているだけで、鮮明に蘇る光景に胸が熱くなる。
舞台袖に捌けていくときは、仰け反るような歩き方があんまり好きじゃないんですけど(威圧の表現なのかもしれないけど、あんまり迫力は感じられなかった…なんかボテボテして見えてしまった…)、再び舞台に戻ってきてからは、コウイチと何度も刀を交えるし、コシオカ・フクダとやりあうときの動きも複雑で派手になっていて見応えがありました。
大将が旗の中から登場するとき、刀を携えて控えるユウタが肩で息をしてるの、本当に好きだった。(本当は消耗してるのを観客に悟らせるべきではないのかもしれないけども、でも、それだけ運動量があった…立ち回りが多かったってことだから)
銃を撃った後も、アンサンブルにも劣らないくらい野次るようになって…ぜんぜん、昨年までとは担うべき役目が違いましたね。
ただただコウイチの気迫に圧倒されて怖じ気づくだけの弱々しいユウタ(あれはあれで、とても好きだった!)はいなかった。
と、は、いっても、野次自体は昨年のリョウタの怒号まんまだなぁ…って思うことも多かったんだけども。でも、「この刀でおまえの首ぶった斬ってやるよぉ!」は文句なしにシビレたし、言い回しをいろいろ試してるんだろうな…って、そう思えることも同じくらいありました。3月の後半のほうで、階段かけあがりながら諸くんに「立てよぉ!!!!立てぇぇぇ!!!!」って発破かけるの好きでした。命の危機を感じて怖じ気づくだけでなく、精一杯の虚勢でも最後まで戦いを諦めない…好戦的なのが外道っぽくて。
ちなみに、個人的野次No.1は野澤くんでした。声が低くて太くて迫力がある。すごく乱暴な言葉遣いじゃなくても様になっていた…と、話は逸れましたが。
階段上で銃と持ち替えた刀をべろりと舐めるの、山賊っぽいのかもしれないけれど、どうしても好きになれず……あと、姫を人質に勢揃いしたときの欠伸も……。気怠げにしたかったのかもだけど、その後の立ち回りからするとアレはキャラ設定がぶれた演技だと、個人的には思うです。物語だから、一貫性が欲しい。
すべてが良いなんてとてもいえないけれど、それでも今年の1番の進化は殺陣で間違いはないと、そう思います。

でも、殺陣の進化に匹敵するほどに、去年までのユウタと歴然の差があったのが、演技でした。
2014年のSHOCKは、9月10月の公演では、優太くんに替わって西畑大吾くんがあのポジションを演じていたのだけれど、大吾くんの演技を観劇するまでのわたしにとっては優太くんの演じる“ユウタ”がデフォルトで、あれ以上はないと思っていたのが、見事に覆されたというか…どちらが上手い下手ではなく、こういう役の捉え方があって、こういう表現の仕方があるのか…と、いい意味で愕然としたのを覚えています。
本当に単純な好みの問題として、大吾くんのお芝居が好きだったのです、既存のユウタにはどうしたってなりきれないところで表現した結果がダイゴだとするなら、大吾くんはSHOCKというストーリーをじっくり研究して試行錯誤してあれに行き着いたのだろうと…そう思えて、するとますます、作品の理解度は大吾くん>優太くんだったのかなぁ…と、今考えてみても、そう思うのです。
でも、そんなふうに一度思えたからこそ、今年のSHOCKのユウタは、ひと味もふた味も役に深みが出ているように…きちんとユウタの存在意義を考えて演じていると、そう感じられて嬉しくなったのだと、思うのです。
2014年はお芝居のお仕事に恵まれた1年で、その経験をしっかり糧にしてユウタを演じていたんだなぁ…と。オンブロの幕間、Higher、ヤラの告白…幾度となく訪れるシリアスな場面での表現の多彩さがそれを物語っていたと…だから、少しも逃したくなくて観劇するたびに必死でした。瞬きすら惜しかった。
表情も、アドリブの呟きも、最後の最後まで試行錯誤していたのだろう……「これが完成形」ってのがあまりなかった…もちろん、個人的には『前の表現の方が好きだったよ~(>_<)』って思うことも多々あったんだけど、優太くんなりにユウタがどんな人間か、あのカンパニーの中でどんな立場なのか、そういうことを考え続けた結果なのだとしたら、そんなに素敵なことはないですよ、ね。

光一さんが3年めの優太くんに対してことあるごとに『色気づいた』って評していたんですけど、ほんとにその通りだった。
17歳だったユウタは、今年、19歳のユウタになって、少しだけ考え方が大人になった。そもそも優太くんがSHOCKに初出演した時に、『ユウタは子どもらしすぎて、現実(の17歳)はこうじゃないから戸惑う』みたいなこと言ってたと思うんですけど、そんな過去に鑑みると、今年の優太くんはとても能動的だった。求められるポジションをただ与えられたままに演じるのではなくて、役を噛み砕いて自分なりに表現する力が身についてきたのかな…と。
本来ならいくら年を重ねようがそれを役に反映すべきではないと思うのだけどね。だって毎年、毎日繰り返されるそれは時間が淀んだ空間だから、年齢を感じさせたら駄目だと思うんだけど。
でも、目に見えた進化の表れがそれで許されるのは若者の…10代の強みだろうから、過渡期のユウタをこの目で見て、いろいろなことを感じられて嬉しかった…幸せでした。


もし、2016年もユウタを演じられるのなら。
過渡期から一歩抜け出した、完成形に近づいたユウタが観てみたい。劇的な変化より安定感を求めたい。細かな小技を光らせる、洗練された演技が出来るようになったら最高だな~って思う。
そんな未来がやってくるのを心待ちにしている。