かわいいだけじゃいきていけない!

箒でさっと掃かれて消えてなくならないように

Depuis que vous étiez trop brillant

8月21日、名古屋ガイシホール、18:00開演、KOICHI DOMOTO concert tour Spiral ファイナル公演での出来事。

びっくりするほど支離滅裂なツイートなんだけれど、これについて。自分の心を落ち着けるために、ことの次第を改めて振り返ってみようと思う。


オーラスの公演は有り難いことに席がメインステージに近くて、光一くんの様子を肉眼ではっきり眺めることが出来たのだけれど、3曲めのMUSEの時点ではもう尋常じゃない汗をかいていた。ターンをしたり少し左右に体を揺らすだけで次々に飛び散る汗は、ステージ⇔客席の距離で見るとそれすら美しく絵になる光景ではあったのだけれど、でも。それだけ消耗しているってことだったのだろう。
立て続けのハードなダンスナンバーを終えて、やっとMCタイムになった頃には、INTERACTIONの衣装…白いシャツは汗でびっしょりで、ベストに覆われていない部分はどこもかしこも体に張り付いて肌色が透けてみえていた。おそらくは滴り落ちてくる汗を何度も何度もタオルで拭って、「・・・(この汗のかきかた)おかしいやろ」とぼそぼそ呟いて。空調に関しても「単純に空調が弱いねん」とマジトーンで語った光一くん。MC中に「やっべー頭ふわふわしてきた~!」なんて、おちゃらけた口調で言っていたけど、今思えばあれは精一杯の訴えだったのかもしれない。
MC後も相変わらず素晴らしいパフォーマンスを披露してくれていたんだけれど、「…大丈夫かな?」と違和と不安が胸を占める場面がやってきた。
STELLAR NIGHT~星のバルコニー~/Love Professor/Bad Desire、天空から降りてきた十字の花道を歩いて、上手端からセンステ方向に歩いてくるとき。両手で両方の柵をつかんで、俯いて、ほんの一瞬歩みが止まった…ように見えた。大きくて重い息を吐き出す音が聞こえてきそうだった。でも、次の瞬間にははっとして俯き気味だった顔を上げて“いつもの”光一くんに戻った…ように見えた。
ドキッとした。だって、お客さんの前ではそういう不調を見せたくない人だろうに。仮面を張り付けておけないくらい具合悪いのかなって思った。
メインステージに戻ってきた光一くんを、瞬きも忘れてじっと眺めてみたけれど、俯いて目を閉じ、次いで天を仰ぐ横顔が険しく見えて、でも、もしかしたらわたしがそう見えているだけなのかなって…いや、もちろん消耗はしてるんだけれど、それでもまだぜんぜん踏ん張れるんだなって思うことにした、そう、信じたかった。


アンコールは、いくらでもコールでつなぐから、長いインターバルがあっていいと思った。少しでも長く休んで欲しかった。あの時、光一くんがなかなかステージに戻ってこれなくても、誰も文句なんて言わなかったろうし、本人は好きではないらしいけど、ずっと名前を呼び続けただろう。

SHOCK!を披露する前に「今の状態ではちゃんと踊れるか自信ない」って言ったけど、そんなことする人じゃないってことはわかってたし、歌い終えたときにステージに倒れこんだ時には、この後の曲はもしかしたらできないかもしれないなって覚悟もした。それでも、叫ぶように「もうちょっと歌おう!」光一くんがそう言ったから、正直嬉しかった。だってツアー最後の公演だから、セットリストをこなせないまま終わってほしくないっていうのが、わたしのまごうことなき本心だった。まだまだ終わってほしくなんてなかった。
あっという間にLOVE CRIESを歌い終えて、近くの柵が開いた。トロッコの準備が目の前ではじまったとおもってすぐ、光一くんが目の前にやってきた。
そして。
トロッコに乗り込んだ瞬間、光一くんの頬が張った。体が前のめって、唇を真一文字に結んで、それは吐き気をこらえる表情でしかなくて。

心臓が止まりそうだった。
膝が落ちて、それでも、崩れそうな上体は何とか支えて必死に吐き気をやり過ごした後、上向いた顔は焦燥しきっていて。状況を確かめるようにきょろきょろとあたりを見渡して。
こんな切羽詰まった光一くん、見たことない…って、ショックだった。光一くんに失望したわけでは決してない。じゃあ何がショックだったのか後から考えてみると、そんな状態を目の当たりにしているのに、心から「もうおしまいでいいよ!無理しないで!」って言ってあげられない自分に、かなぁ…と。あと、完璧なだからこういう辛さは見せないはずだと思い込みすぎていた自分に。
それが光一くん本人の望んで貫いてきたことだとしても、こんなに辛い状態になってまで、貫かせてしまうことに。

動き出したトロッコの上で、どうしようもなくてしゃがみこんだのに、前奏が終わる瞬間にふらりと立ち上がって口元にマイクを構えて歌いだしたその一連の行動は、もう、自分の意思じゃないのかなって感じだった。舞台人として、反射的に体が動いている…というか。記憶は一切残っていないんだろうな…そんな感じ。

文字通り、命を削っている姿にもう泣くしか出来なかった。

だけど。
トロッコをおりて、一度センステへ向かってからメインステに戻ってくる花道で、踊り狂うダンサーさんの姿を見たときに、光一くん笑ったんです。
笑って、歩みながらゆっくりとステップを踏んだ。すごく弱弱しいステップだったけど、でも足は動いていた。「きついけど、楽しい」の言葉を体現するように。
そして光一くんがやっとメインステージへ戻ってきた時、それまで笑わなかった赤まりさんが光一くんに目配せをして、思ったよりもしっかりとした意思相通が出来たのか、満面の笑みを浮かべて。

このツアーの出演者の絆の深さに思いを馳せずにはいられなかった。
光一くんが息を吹き返せたのは、同じだけ過酷さを味わってきた仲間の存在があったから。そういう人たちの作り上げるステージを体感できて幸せだった。


…と、がーっと書きなぐってきたけれど、これはあくまで、わたしの目にはこう見えていたという、事実ではない記憶です。
もしかしたらあの表情を忘れることはいつまでたってもできないかもしれないし、思い出すたびに動悸がして気持ちがぐるぐるするのだろうけれど、それでも、Spiralツアーがとても良い公演だったと、自担の出演していた公演を差し置いてこの夏の一番の思い出になったということは言うまでもないのでした。

きみが、あまりにも眩しすぎたから。

全12公演、お疲れ様でした。幸せな夢を見せてくれてありがとう。