かわいいだけじゃいきていけない!

箒でさっと掃かれて消えてなくならないように

An die Freude

ルードヴィヒ.B@東京国際フォーラムホールCを観劇した感想です。
音楽劇という発表の時点で楽しみにしていたのがはっしーくんの歌唱力。あと、はっしーくんがガチンコでお芝居する姿を見てみたかった…だって、少年たちもABC座もジャニワも、確かにお芝居をしているはずなのに“はっしーくん”なんだもん…決して下手ではない、だけど良くも悪くも“はっしーくん”……ちなみに、BBJのヒロは前述に同じなのですが、チェリーズは未見…という程度でしかはっしーくんの演技を見たことのないわたしが偉そうにも批評できるわけない、と、いうのは百も承知で、個人的な感覚で言葉で上手く説明できないけど……とにかく、“はっしーくんではない、まったく別の何者か”になっているはっしーくんというものが見たかった…のです。

…で、結論からいくと、はっしーくんははっしーくんなんだな、という。そりゃそうだよ~!って、納得いった、というか。
ただ、これにマイナスな気持ちはひとつもないんです。だって、わたしが今まで見てきた数少ない“お芝居をするはっしーくん”の中で、今回が一番良かったって胸を張って言えるもの!!
声とか言いまわしとかはね、はっしーくんなんだよ。彼、独特じゃないですか、上手く説明できないけど…特に言いまわしが普通とは少し違う。でも、ルードヴィヒをきちんと演じていた…と、思う。それは彼の力だけでなく、例えば両親に対する敬語の台詞とか、“そうせざるを得なかった”という部分も大きいのだと思う。でも、“自分でない誰か”になろうと、真摯に向き合っているように、わたしには感じられたんです…。
だいたい、はっしーくんて、たぶん損な人種ですよ。すごく緊張していようが、すごく不安だろうが、そうでないように見える。なんていうかね、そういうネガティブなものは感じさせない…飄々としてるように見えるんです。ポーカーフェース…表情があまり崩れないからかなぁ?真面目に喋ったりすると、結構いろんなことを考えて背負ってるんだなって見え隠れすることもあるのに…彼の基本的には大らかな性質故に見落とされがちな部分だと思うんですよね。
でも、今回観劇した時にね、マイクを通して息遣いが聞こえたんです。幕が上がってモーツァルト先生が登場するまでのシーンで、多分、緊張ゆえの短いスパンでの呼吸音が、マイクで漏れ伝わってくることがあった…と、思うんですよね。(もしかしたらわたしの幻聴かもしれないんだけれども!)(幻聴だったとしたら…とりあえず病院受診しますね…)それだけ、プレッシャーみたいなものが圧し掛かっているのかなぁ…ってぼんやり思った記憶があります。
そのプレッシャーと上手くつきあいながら、はっしーくんだけど、ルードヴィヒになろうとしていた…んだろうなぁ…と、思いました。ヘタクソな感想文かよ!的な…だって、「全く別物の何者か」と、いうにははっしーくんだったし、でもはっしーくんじゃなかったんだよなぁ…難しい…。

主役をやるということの重み、気心の知れた仲間相手ではなく大御所の役者さんとのやりとりが多い舞台だから、そりゃ、今までの舞台とは違う。そういう経験ははっしーくんに限らず糧になるよな~って思う。役者…というか、お芝居をするうえで事務所の狭い世界にいるより外部に出た方が勉強になるとは思うんですよねぇ…絶対的に幅が広いし、経験も豊富だと思うから。
だから、はっしーくんにこういう機会がまた与えられるのなら、わたしはまたその姿をこの目におさめに行くのだろうと、思います。
かわっていくはっしーくんが見たい…!!!


今回はふみきゅんが一緒ですけど、ふみきゅんこそふみきゅんだった(笑)
モーツァルトじゃなくふみきゅん。でも、彼がいなかったらはっしーくんはルードヴィヒを演じられなかったろう……って、そんなことは実際ではありえないとわかってるけど、でも、ふみきゅん演じるモーツァルトとのシーンのはっしーくんはすごい安堵感に包まれていて無防備で無邪気で、ちゃんと息をしていた…ように、わたしには感じられたのです。あまり良いことではないのかもしれないけれど、ABCーZの橋本良亮に瞬間的に戻っていた…と、いうか。だから他のシーンはどれだけはっしーくんでもはっしーくんじゃなかった…と、いう感想になるのかもしれない。
窒息しそうな芝居の中で、唯一きちんと息ができる場所…だけど、ふみきゅんはとてもわきまえているから、ABCーZの河合郁人じゃなかった。ABCーZの河合郁人ならもっと緩いし適当だったりする場面で、馴れ合わさせ過ぎない……そういう緩急のつけかたが天才的に上手い。彼だってさほど外部の芝居をしたわけでもないだろうに、度胸がはっしーくんは格段に違う。今までの経験と培ってきた自信…さすがだなぁって舌を巻く。
今回は脇に徹しているふみきゅんだけど、主演舞台やったらまったく別の顔を見せてくれるんだろうなぁ…って、想像するまでもなくわかるから、ちょっと見てみたい気もする。

わたしはベートーベンの半生については予備知識もなく、ただ音楽劇に出演するはっしーくんが見たいだけだったのだけど、最後の第九歓喜の歌は全身にゾゾゾと鳥肌が立った…圧巻だった…
ルードヴィヒが耳が聞こえなくて、拍手の音が聞こえなくて、振り返れない演出…あのとき客席は出演者になって、会場が一体になってひとつのシーンを完成させる、あの場にいれて幸福だな…って思えた舞台でした。

何かに突き動かされるようにチケットを予約した、その第6感的なものは間違ってなかったなぁ…と思える舞台でした。
また音楽劇観劇したいです。